ヤマザキ マサミ「双眸からの眺め」


ヤマザキ マサミ「双眸からの眺め」

ヤマザキ マサミ
「双眸からの眺め」

Clode Monet(1840-1926)「印象派-日の出/1872」は、印象派の先駆けとなった。
Monetはこの作品のタイトルを求められたとき、「私はこれに“ル・アーブルの眺め”という題をつけ ることはできない。そこで“印象”として欲しい」と言った。この作品を見た、評論家のLouis Leroy (1812-1885)は、「確かに”印象”だ。私は印象を受けたのだから。それにしても何て自由で、何て大 雑把な仕上がりなのだろうか。未完成なこの壁紙の柄の方がこの風景画よりもよっぽど出来栄えがい い。」と自身の風刺新聞にて酷評した。このLeroyの記事が、印象派という言葉のきっかけとなった。

現在、SNSに氾濫する写真は、写真の本質的なリアリティを写し出すものよりも、加工ありきの写真 を多くみかける。これらの写真は現代人が現実を捉える時に、無意識に視覚的フィルターをかけてい るからであるように思う。これは、写真の根本である「ありのままを写す」写実主義の考えから、次 第に印象派主義の考えである「自身の目を通した美しさ、現実にあるものの印象を捉えた美しさ」を 表現するようになりつつあるのではないだろうか。そして日々膨大な視覚に晒されている昨今、価値 観や美意識は益々画一化され、私たちのオリジナリティーは、より一層希薄になっているように感じられる。

作品「双眸からの眺め」は、19世紀の印象派画家たちが描いた絵画の場所から、誰しもがインター ネット上で見ることが可能なライブカメラをリサーチし、カメラが映し出す映像をキャプチャーす る。そのキャプチャーした画をデジタルポジとしてプリントしたのち、顕微鏡レンズを使い複写をす ることで、当時の画家たちが描いた絵画と、デジタル社会における写真のオリジナリティーと、その 相互性を問いかける。

また、インターネットありきで存在する現代において、写真には新たな価値が加わった。
その価値とは、「加工」である。デジタル加工された画像は、再びプリントされ、顕微鏡で見ること によって印象派画家に特徴付けられる独特の点描のようなタッチや色彩感による表現と類似する。か つて画家たちが写真から絵を描き、やがて写実以上の「印象」を追求したように、デジタル写真から 絵画を考察することによって、絵画と写真に新たな相互関係が生まれているように感じる。

この作品には複数の「視線」が存在している。それは公と私が混在した視線だ。
印象派画家たちの私的な視線、ライブカメラという何時も誰しもがまったくもって同じ映像をみるこ とができる公の視線、ライブカメラの映像から一瞬をキャプチャする私の視線、そして、顕微鏡レン ズを使いキャプチャされた像を覗き込む私的な視線だ。
このように、現代のインターネット社会では、私たちが見るという行為の中に、「公」と「私」の複 数の視線が混在している。
そして、リアリティのあり方や美意識もテクノロジーや時代とともに常に変化しているのだろう。




作品一覧 https://www.nuaphoto.com/2020sotsuten

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